異方性?等方性?エッチングの違いについて。
日常ではあまり耳にしない単語ですが、「異方性」や「等方性」という物理学や材料科学の世界で使われる用語があり、異方性というのは「方向によって性質が異なることを指し」、等方性というのは「方向によらず性質が均一である状態を指す」そうです。
言い換えると「ある方向に対して性質や挙動が異なるとき、その物質や現象は異方性を有して」おり、「どの方向を考えても物質や現象の性質が同じである場合、その物質や現象は等方性を有して」いることになる…らしい。
という難しい前置きから入りますが、今回はエッチングにも「異方性」と「等方性」があるんです、というお話です。
ちなみに弊社で行っているようなウェット(液体を用いる)エッチングは一般的に等方性のエッチングです。
液体を用いた加工であることから、必ずしも加工したい方向(この場合は加工面に対して垂直方向)だけに加工が進むのではなく、本来は加工したくない方向(加工面に対して平行方向)にも加工が進んでしまう、というメカニズムです。
だからこそ、端面は独特のテーパー形状になりますし、あらゆる角部にはRが付いてしまいますし、材料の厚みより小さな穴を開けるのが難しい、というウェットエッチング特有の制約が発生することになります。
もしこれが異方性のエッチングであれば、マスキングパターンの通りに真っ直ぐ加工されてくれますので、寸法や形状や加工限界など、色々な悩みごとがものすごく楽になってくれるのですが、なかなかそうもいかないのが当社で行っているような金属エッチング加工の難しいところ。
ちなみに異方性エッチングの代表格は反応ガスをプラズマ化させて加工するドライエッチングですが、これは半導体などの生産に用いられる、非常に薄い対象物向けのエッチング方法ですので、弊社が扱っているような厚みの金属材料には全く歯が立ちません。
この辺りは一長一短、というか同じエッチングでも全く違うジャンルの加工と言えるかも知れません。
等方性エッチングだからこそ、材料の板厚に対して開けられる穴の径に制約があったり、同じ形状でも材料の板厚が変わると原版が別に必要になったりするのですが、この辺りはまた別の機会に。
「じゃあこの場合、ここの形状はどうなるの?」など、分からないことがあれば弊社営業までお気軽にお問合せください。