銅のエッチング加工事例の紹介と特徴の解説
銅は高い導電率や熱伝導率を持ちながら加工性に優れ、古来から人類に広く利用されてきた金属です。
エッチングによる加工性も良好で、弊社でもステンレスの次に多く使用しているのが銅と銅合金です。
この記事では銅と銅合金の特性やエッチング加工技術の解説、主な用途や弊社の加工事例を紹介していきます。
銅のエッチング加工をお考えの方は、是非参考にしていただき、弊社にお任せいただければ幸いです。
銅とは?エッチング加工技術の解説と、各種銅合金の特性
銅はステンレスよりも腐食しやすく、エッチング加工の進行が速い為、エッチング液やエッチング時間などの条件を材料に最適なものに設定する必要があります。
同じ銅合金でも種類によってエッチング性には差がある為、材料種に応じた加工条件の見極めを行います。
また、銅の特性上、酸化による変色等の生じるリスクが高い為、材料の取り扱いには特に注意する必要があり、洗浄工程や乾燥工程の管理も大切です。
各種銅合金の特性
弊社が取り扱う事の多い銅合金を紹介します。
【リン青銅】
- 銅にリンと錫を加えた合金。
- 非磁性であり、高いバネ性と導電性を持つことから、端子やコネクターの部品として用いられる。
- 圧延後に熱処理を加え、更にバネ性を高めた「バネ用リン青銅」もあり。
【ベリリウム銅】
- 銅に0.5~3%のベリリウムを加えた合金。
- 非磁性で火花の出ない特徴を持つ。時効硬化処理で銅合金の中では最も高い強度を得る。
- バネや接点、防爆工具の材料として用いられる。
【黄銅(真鍮)】
- 銅と亜鉛の合金で、特に亜鉛の割合が20%以上のもの。
- 加工性が高く導電性に優れる。
- 電子部品の他、硬貨や楽器の材料としても知られる。
この辺りの材料を扱うことが多いですが、他にも様々な特徴を持つ数多くの銅合金が存在します。
銅のエッチング、主な用途
銅材料のエッチング加工品として、以前はリードフレームに代表される銅の高い導電性を活かした電子部品が多く流動していました。
近年の傾向としては、銅の高い熱伝導性を活かした熱移動、放熱系の部品の割合が増加してきているようです。
それに伴って用いられる銅材料の厚みも増加する傾向にあり、1mmを超えるような厚銅の部品も珍しくなくなってきました。
一番多くエッチング加工している銅の種類と選定方法
当社で加工している銅材の中で取り扱いの多いものは、まず純銅に分類される「無酸素銅」や「タフピッチ銅」でしょうか。
銅の純度が高いことから導電性、熱伝導性に優れ、電子部品の他、放熱や熱交換を目的とした部品に用いられます。
欠点としては柔らかく変形しやすいことで、強度が必要とされる用途には不向きです。
板ばねや端子など、ばね性が要求される部品には「リン青銅」「ばね用リン青銅」「ベリリウム銅」などが、それぞれの用途と特性に応じて使い分けられています。
その他、一般的に真鍮と呼ばれる「黄銅」も電子部品や雑貨、楽器などに幅広く用いられている身近な銅材の一つですが、こちらは耐食性や強度を活かした大きな加工品になることが多いからか、あまりエッチングの出番は無いようで、当社での取り扱いもそれほど多くありません。
銅のエッチング加工事例
銅のエッチング加工の製品事例を紹介します。
放熱板(ヒートシンク)
https://www.toyo-ppm.co.jp/works/1926/
エッチングの高い加工自由度を活かし、ディンプルやエンボス、スリット、フィン形状を形成して表面積を増やし、放熱性を高めています。
【エッチング チャンバー】ベイパーチャンバー部品(ケース&フタ)
https://www.toyo-ppm.co.jp/works/1956/
ハーフエッチング加工により、ケース側には冷媒封入用の中空構造、フタ側には放熱効果を高める為のフィンを作りました。
バスバー(ブスバー)
https://www.toyo-ppm.co.jp/works/2257/
厚板の加工を得意としており、1.0mmを超える厚みの銅板でも対応可能です。
よくある質問 (Q&A)
Q:銅のエッチング加工は材料入手から依頼可能ですか?
A:一般的な銅材料であれば当社で調達可能です。特殊材の場合はご相談ください。
Q:材料を支給しての加工依頼は可能ですか?
A:可能ですが、事前に加工可否のテストが必要です。また成分情報の開示をお願いする場合がございます。
Q:銅とステンレスで加工精度に違いはありますか?
A:一般的な銅材料であれば、ステンレスと同等の精度で加工可能です。
Q:銅材へのハーフエッチング加工は可能ですか?
A:問題無く対応可能です。
Q:エッチング後の曲げ加工は対応可能ですか?
A:エッチング後、鈑金曲げの追加工にも対応可能です。
Q:銅材の拡散接合は可能ですか?
A:一部銅材料で拡散接合の実績がございますが、接合後は硬度が大きく低下する為、強度が必要な用途にはお奨めいたしません。
まとめ
銅はその優れた導電性や熱伝導性を活かし、様々な電子部品や放熱部品に用いられています。
また、合金化することで純銅には無い多くの特性を付与できることも利点の一つです。
銅材料を加工する場合、
「銅は柔らかい為、切削加工だとバリや変形が生じやすい。」
「光沢が強い為、レーザー加工だとレーザー光が反射して装置故障に繋がる。」
などの懸念がありますが、エッチング加工であればこのようなリスクを回避し、必要な形状を精度良く得ることができます。
材料特性を損なうことなく加工可能なエッチング加工の活用を是非ご検討ください。