やってみた企画 第1弾② 「SUS材 3種類 観察してみた」

※本記事は東洋精密工業が実際にSUS304・SUS430・SUS316を同条件(板厚0.2mm)でエッチング加工し、加工後の端面を顕微鏡で観察・比較した実測レポートです。
前回のあらすじ

仏 洋:前回は僕たちが実際に工場に行って、サンプルのデザインやエッチング加工までしたんだよね。今回は、そのサンプルを観察していきます。
▼前回の記事はこちら
サンプル紹介 ― どこを観察するのか

今回観察するのは、1枚のエッチングサンプルに設けた次の5つのポイントです。
・①スリット
・②ハーフエリアにスリット
・③ハーフ裏のスリット
・④ハーフ段差
・⑤外形端面
※「ハーフ」=ハーフエッチング部(板厚の途中まで掘る加工)。スリットの向きは、ロール方向に対して垂直・平行の2方向で観察します。

観察するサンプルは、SUS304・SUS430・SUS316の3種類。板厚はすべて0.2mmで揃えています。SUS430には金属光沢が見られ、磁石にひっつくかどうかでも他の2種と判別できます。
技術コラム~あをによし~ 材料毎の特性について

SUS304・SUS430・SUS316の一般名・主な組成・特徴は次の通りです。
・SUS304:クロム18%・ニッケル8%。最も汎用的なステンレス
・SUS430:クロム18%。磁性を持つ
・SUS316:クロム18%・ニッケル12%・モリブデン2〜3%。耐食性に特に優れる
※一般的な材料特性です。
SUS316はSUS材の中でも耐食性に特に優れており、一般に耐食性が高いほどエッチング加工はしにくくなる傾向があります。
端面状態の比較(①~④)
SUS304・SUS430・SUS316のそれぞれについて、各観察ポイントの端面を垂直・平行の両方向から顕微鏡で観察しました(垂直・平行はロール方向に対するスリット方向を指します)。

①スリット部:3材種とも、垂直・平行いずれの方向でも、スリットの角が丸みを帯びており、材質による大きな違いは見られませんでした。

②ハーフエリアにスリット:ハーフエッチング面は表面がややザラついた質感になりますが、3材種に共通した傾向で、材質ごとの差はほとんどありません。

③ハーフ裏のスリット:通常のスリット(①)と比べて大きな違いは見られませんでした。

④ハーフ段差・⑤外形端面:ここでも3材種の間に目立った差はありませんでした。
観察結果① …角が丸まってる!?

観察を通じて共通して見えてきたのが、CADデータでは直角に設計した角が、エッチング後はすべて丸みを帯びるという現象です。これは開口部の角(内角)も、外形の角(外角)も同じでした。
技術コラム~あをによし~ 内角の丸みについて

エッチングは薬液で金属を溶かして加工します。薬液は液体なので、縦にも横にも均等に広がろうとします。そのため角まで均一に液が入りにくく、内角は丸みを帯びた形状になります。
技術コラム~あをによし~ 外角の丸みについて

一方、外角は逆に薬液が当たりやすい部分のため、より多く溶かされて丸くなります。内角とは反対のメカニズムです。
観察結果② …SUS316の仕上がりが綺麗・・・?

SUS316は耐食性に特に優れた材料です。一般に、耐食性が高い材料ほど薬液で溶けにくく、エッチング加工がしにくい傾向があります。ところが今回のSUS316の端面は、他の2種類と同様にきれいに仕上がっていました。
技術コラム~あをによし~ SUS316の加工性について

実はSUS316だけ、加工時に一工夫を加えています。他の材質と同じ条件で加工したサンプルと比較してみます。
技術コラム~あをによし~ SUS316 実はガタガタ…!?

SUS316を他のSUS材と同じ条件で加工したサンプル(一工夫なし)と、条件を調整したサンプル(一工夫あり)を比較すると、一工夫なしの方は端面が明らかにガタついた仕上がりになりました。SUS316本来の加工しにくさを、加工前・加工時の調整でカバーしているということです。
※「一工夫」の具体的な内容は当社のノウハウです。耐食性の高い難加工材でも要求品質どおりに仕上げる技術があります。
まとめ:SUS材3種類の観察結果

・SUS430は磁性・金属光沢あり(磁石で他材種と見分けられる)
・材質によらず、加工後の角は丸まる(内角:液が均一に入りにくいため/外角:液が当たりやすいため)
・SUS316はエッチングすると端面がガタつきやすいが、加工前の一工夫でカバーしている
SUS材3種類とも、大きな違いなくエッチング加工できます。どの材料を使用すれば良いかは、お気軽にご相談ください。

次回は「銅材4種類 観察してみた」。お楽しみに!
To Be Continued…

